スケーラビリティ問題をどう解決する?レイヤー2(セカンドレイヤー)とは?
「ブロックチェーンのスケーラビリティ問題をどうやって解決しようとしているの?」
この記事ではこういった疑問を解説します。
トリレンマ
仮想通貨のプラットフォームとなるブロックチェーンは、私たちの生活シーンを一変させる力がある斬新なスゴい技術です。
一方で、構造上避けられない「トリレンマ」を抱えています。
相反する2つの要素の板挟みが「ジレンマ」ですね。
「トリレンマ」は、相反する3つの要素の板挟みのこと。
相反する3つの要素とは
- スケーラビリティ
- 分散性
- セキュリティ
どれか2つを満たそうとすると、どうしても残りの1つが犠牲になります。この問題には、根本的な解決法はまだありません。
が、解決の糸口として期待されている技術はある。
それが、「レイヤー2(レイヤーセカンド)」。
この記事ではレイヤー2でどのようにトリレンマ解決にアプローチするのかを、レイヤー1を引き合いに出しながらわかりやすく解説します。
レイヤー1とスケーラビリティ問題
まず用語の意味を理解しましょう。ざっくりとこう理解してください。
- レイヤー1=ブロックチェーン
- レイヤー2=ブロックチェーン以外のチェーン
すべての仮想通貨は、ブロックチェーンの上で動いています。
世界中に分散するノード(ブロックチェーンを管理するパソコンのこと)が中央集権的なクライアントサーバーを介さずにそれぞれがつながっています(ピアツーピアと言います)。
ビットコインでは約10分間分の取引をまとめて、1つのブロックに入れます。
このブロックはブロックチェーンの最後尾に、電車の車両を連結するようにガチャンとつながれてはじめて取引が完了。
ビットコインの誕生からこれまでの間、10分ごとにこのガチャンが延々と繰り返されている訳です。
ここで1つ問題があって、1つのブロックの容量は1MBと決まっているんです。
だから、取引が多くなるとブロックに入れてもらうための順番待ちができます。こうして取引に時間がかかるようになります。
早く取引を処理してもらうためには手数料を高くする方法があります。なので早く取引したいというニーズが高くなると手数料がどんどん高くなります。
全ての取引をブロックチェーン上に記録しようとするとそのたびにマイニング手数料がかかるため、少額な決済(マイクロペイメント)には向かないという弱点もあります。
このような
- 取引処理の遅延
- 取引手数料の高騰
をスケーラビリティ問題といいます。
ビットコイン | |
---|---|
スケーラビリティ | ✕ |
分散性 | ◯ |
セキュリティ | ◯ |
ビットコインには管理者はおらず利用者それぞれがピアツーピアでつながっているので分散化が進んでいます。サイバー攻撃にも強くセキュリティ万全。
その反面、これらを優先すると取引処理の速度が下がり手数料が高騰する(スケーラビリティ問題)という「トリレンマ」が生じます。
レイヤー2(セカンドレイヤー)
このようなレイヤー1が抱えるトリレンマ、中でもスケーラビリティ問題を解決するために開発されたのが「レイヤー2(セカンドレイヤー)」です。
レイヤー2(セカンドレイヤー)とは、ブロックチェーン上(レイヤー1)に記載されないオフチェーンのことを指します。
ブロックチェーンにすべての取引を書き込まず、外のチェーンで取引を実行しその最終結果だけをブロックチェーンに戻して書き込む方法。
こうすることでレイヤー1への負荷を大きく減らすことができるので、取引遅延を防げます。
ライトニングネットワーク(英: Lightning Network)
レイヤー2の主な技術にライトニングネットワークがあります。
2者間でオフチェーン取引を行うペイメントチャネルという仕組みが利用されています。
たとえばAとBがそれぞれ3BTC、計6BTCを共同で管理する「ペイメントチャネル」をブロックチェーンから切り離して立ち上げます。
Aが1BTCをBに送金すると、Aが2BTC、Bが4BTCになります。
同様の取引は2人の間で何回でも行うことができ、最終的にペイメントチャネルを閉じるきの状況のみがブロックチェーン上に記録されます。
つまりペイメントチャネルを利用した複数回の取引はブロックチェーン上に記録されないため、その分送金時間と手数料を節約できるんです。
ただ新たな相手と取引を行うたびにペイメントチャネルを立ち上げるのは効率が悪いですよね。
そこで既存のペイメントチャネルをつなぎ合わせることで、新規にペイメントチャネルを立ち上げることなく新たな相手とオフチェーン取引を行う。
これがライトニングネットワークという技術です。
たとえば共通のペイメントチャネルを持たないAとCが取引を行う場合、AとCそれぞれとペイメントチャネルをもつB介して取引を行うことができるようになります。
オフチェーン型のレイヤー2で、完全にレイヤー1のブロックチェーンとは切り離した形で稼働させるのが特徴。
レイヤー2のデメリット
ライトニングネットワークなどのオフチェーン型のレイヤー2のデメリットはセキュリティです。
レイヤー1とは切り離して外部で取引の計算を行い結果だけをレイヤー1に戻すので、レイヤー2での取引や計算プロセスは一切記録も公開もされない。
なので戻された結果を信じるしかなく、何らかの不正が行われていても判別できません。
またペイメントチャネルは脆弱性が指摘されており、サイバー攻撃によって一斉に閉じられた場合、取引が一切できなくなりレイヤー1も滞ってしまいます。
レイヤー2は発展段階。ブロックチェーンのトリレンマを解決するために、今後ますます精度が高くなると予想されます。
その一方で、レイヤー2を必要としないレイヤー1の開発も進んでいます。
一例が「Solana 」。取引処理の速さと手数料の安さ、そしてブロック作成速度の速さが特徴です。
イーサリアムが1秒間で13~15の取引を処理する間に、Solanaは50,000の取引を処理できます。
しかも手数料は、イーサリアムの100万分の5以下。ブロック作成速度は、ビットコインの1万分の7以下という驚異的なスピード。
レイヤー1のみですべての処理を完結できるので、セキュリティ問題もありません。
さらにSolanaは、イーサリアムをはじめほかのブロックチェーンとのブリッジ機能があるので、ほかの仮想通貨との互換性があります。
スケーラビリティ問題が深刻なイーサリアムと繋げば、処理速度と手数料を大きく下げると期待できます。
ブロックチェーン技術が克服すべき最大のテーマ=トリレンマが解消されれば、仮想通貨はより高い実用性と信頼性を兼ね備えることになります。
まとめ
ブロックチェーンのトリレンマ、中でもスケーラビリティ問題はビットコインやイーサリアムにとって非常に悩ましい。
しかしレイヤー2を活用すれば、レイヤー1に負担をかけずに低コストかつスピーディーに取引を処理することが可能。
セキュリティの脆弱性やオフチェーンで取引の可視化問題をクリアーすれば、レイヤー2はブロックチェーンエコシステムにとっての大きな進歩になります。